薬剤師として働いていると、AMRという言葉をよく聞きますよね。
AMRとは「薬剤耐性」のことで、近年、不適切な抗菌薬の多用により薬剤耐性菌の発生が、世界中で問題になっています。
厚生労働省から発表された「抗微生物薬適正使用の手引き」でも、抗菌薬の適正使用の重要性が強調されています。
そのため、風邪(急性上気道炎)で病院を受診しても、感染原因のほとんどがウイルス感染であり、薬剤耐性菌を増やさないために、抗菌薬が処方されないケースが多いですよね。
自分が子供の頃は、風邪をひいて病院に連れて行かれると、よく抗菌薬の粉薬が処方されました。抗菌薬は苦くて嫌がっていた記憶があります笑
さて、そんな風邪(急性上気道炎)は先ほども言った通りウイルス感染がほとんどですが、もちろん細菌感染によっても引き起こされます。
その場合は、抗菌薬を使用すると症状の改善が早いのも事実です。
では、抗菌薬が処方されている場合、感染症の原因が細菌とウイルス、どちらによるものなのかをどうやって見分ければよいでしょうか。
薬剤師として、抗菌薬が必要かを判断する上で重要です。
そこで今回は、検査値のCRPと白血球数から細菌感染とウイルス感染を見分ける方法を紹介します。
医療従事者でも間違えている医療用語の使い方!抗菌薬と抗生物質(抗生剤)の違いについて
目次
薬剤師がどちらかを判断するのは難しい
なぜかと言うと、薬剤師は患者の咽頭など症状がある部位を、直接見ることができないためです。
風邪(急性上気道炎)の症状は、発熱・咳・鼻水・喉の痛みが一般的です。発熱している患者の場合、医師は咽頭など診察所見から細菌感染かウイルス感染かを判断しています。
薬剤師の場合は、咽頭などを直接見ることができないので、患者からの問診と処方内容から症状を判断しています。ただ、それだけでは情報が乏しく、細菌感染かウイルス感染かを判断するのは難しいというのが実情です。
そこで注目するのは、血液検査のCRPと白血球数です。
最近はクリニックでも、CRPや白血球数を数分で測定できる
CRPや白血球数を測定するには、採血による血液検査をする必要がありますが、
「風邪(急性上気道炎)ぐらいで、わざわざ血液検査はしないのでは?」
と思いがちです。
確かに、患者への負担を考えて血液検査をしないで、抗菌薬なしの対症療法で経過観察するというケースも多く見られます。
しかし、最近は少量の血液から5分程度で、CRPや白血球数などを測定できる自動血球計測CRP測定機を導入する病院やクリニックが増えています。
そのため、患者に負担をかけずに、炎症や感染症の指標となるCRPや白血球数を短時間で調べることができます。
CRPと白血球数から細菌感染・ウイルス感染を判断する方法
急性上気道炎など一般的な感染症の場合、細菌感染とウイルス感染でCRPや白血球数の値の変化が異なるのがポイントです。
本題に入る前に、CRPと白血球数についておさらいです。
CRP(C反応性蛋白)とは
CRPは感染症や悪性腫瘍、自己免疫疾患、心筋梗塞などの炎症または組織壊死がある病態で血液中に増加する蛋白質(急性期蛋白)で、急性炎症の指標として最も広く使用されている指標です。炎症等がなければ基本的には0に近い値になります。
基準値:0.3mg/dL以下
白血球数(WBC)とは
白血球は血液中に存在する細胞成分(血球)の1つです。主な役割としては免疫であり、外部より侵入してきた細菌、ウィルス等に対応する細胞性免疫機能を有しています。そのため、感染症では白血球数が増加し、感染症・炎症の指標として用いられます。
基準値:4000~8000/µL(個人差あり)
では、細菌感染とウイルス感染で検査値がどのように変動するのか、表にまとめました。
細菌感染 | ウイルス感染 | |
CRP | 中等度~高度上昇 | 陰性~軽度上昇 |
白血球 | 増加 | 正常~減少 |
好中球 | 増加 | 正常~減少 |
CRPは一般的にウイルス感染よりも細菌感染の方が、組織の破壊や炎症反応も強いため、CRPの上昇も大きくなる傾向にあります。
目安としては、CRP値が
- 0.3~3:ウイルス感染症の場合が多い(抗菌薬は不要)
- 5以上:細菌感染症の場合が多い(抗菌薬の処方を検討)
一方、白血球数では細菌感染は増加し、ウィルス感染だと増加しない傾向にあります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
不要な抗菌薬の使用は是非とも避けたいものです。
細菌感染とウイルス感染を、CRPと白血球数を使って見分ける場合の参考にしてください。
ただあくまで判断の目安なので、当てはまらない症例も多数あるかと思います。なので、最終的には必ず医師の判断に従うようにお願いします。