薬剤師として働いていると、薬剤師賠償責任保険について聞いたことがあると思います。
薬剤師賠償責任保険とは、調剤過誤や服薬指導のミスなどで賠償責任を問われた時に、自分を守ってくれる保険です。
そもそも過失が起きなければこのような保険は不要ですが、どこの職場でも大小を問わず何かしらのインシデントは必ず起きており、これらのインシデントを100%防ぐことは不可能と言われています。
それに加え、薬剤師業務は患者の命にかかわる仕事であるため、賠償責任を問われる可能性が少なからずあります。
薬剤師として万が一に備えることはとても大切です。
割合で言うと、薬剤師賠償責任保険に個人で加入している薬剤師と、加入していない薬剤師は半々といったところでしょうか。個人では加入していないけど、勤めている会社が施設単位で加入しているパターンも多いかと思います。
このように、ほとんどの薬剤師が自分の身を守るため、何かしらの保険に加入していると言えます。もし何も備えていないなら、薬剤師賠償責任保険に加入しておきたいところです。
また、会社が病院や薬局単位で薬剤師賠償責任保険に加入しているからと言って、安心はできません。
実は、契約内容によってはパートや派遣社員などの非常勤薬剤師が対象にならないことがあるため、その場合は事故が起きても保障を受けることができません。
会社が病院や薬局単位で加入している薬剤師賠償責任保険の対象に自分が含まれているかを把握し、含まれていない場合は個人での加入が必要なのか、しっかり判断する必要があります。
そこで今回は、薬剤師賠償責任保険についてのまとめです。パートや派遣で働いている薬剤師の方はぜひ確認しておきましょう。
目次
薬剤師賠償責任保険とは
近年の傾向として、医療過誤が起きた際に訴訟側は医療機関だけでなく、医療専門職個人にも過失や賠償責任を問うようになってきています。
薬剤師賠償責任保険は、薬剤師が調剤過誤や服薬指導のミスなどで賠償責任を問われた時に、保障してくれる保険です。
加入形態には、病院や薬局などの施設単位で契約するケースと個人で契約するケースの2種類があります。
こんなケースで賠償責任を問われることも・・・
自分の調剤過誤によって健康被害が生じてしまい、賠償責任を問われてしまった場合は仕方がありません。
しかし、医師の処方せんが間違っており、それを見過ごしたことにより賠償責任を問われてしまう場合もあります。
もちろん処方せんに誤りがあれば、薬剤師は医師に疑義照会を行うことを法律で定められていますが、中には常用量を超えている処方せんについて疑義照会を行うと、医師に嫌な顔をされ「いちいちケチをつけるな!そのまま調剤しろ!」と言われてしまい、そのまま調剤するケースも少なくありません。
こういった場合に健康被害が生じてしまうと、医師だけではなく、処方せんに納得していない状態で調剤を行った薬剤師も責任を問われる可能があります。
このような場合は、疑義照会内容をしっかりと処方せんの備考欄と薬歴に残すことが重要ですが、賠償責任に問われても対応できるように薬剤師賠償責任保険に加入するとより安心です!
パートや派遣薬剤師は薬剤師賠償責任保険に個人加入する必要性がある!
ほとんどの会社は、病院や薬局などの施設単位で薬剤師賠償責任保険に加入していますし、中にはパートや派遣などの非常勤薬剤師でも対象となる保険に加入している会社もあります。
しかし、契約内容によってはパートや派遣などの非常勤薬剤師が保険の対象外になっていることが少なくないのが現実です。
施設単位で薬剤師賠償責任保険に加入している場合、自分が保険の対象に含まれているかを把握するようにしましょう!
「職場が加入しているから自分も対象になっているだろう」とあいまいにしておくと、問題が起きてしまった場合に保証を受けられず、多額の賠償金を請求されてしまう可能性があります。
また、薬剤師賠償責任保険の契約内容については、管理薬剤師に確認してもわからないことが多いので、会社の担当している部署に確認してもらうと良いかと思います。
もし、保険の対象外ならば薬剤師賠償責任保険に個人で加入する必要があります。
派遣薬剤師は調剤過誤を起こしやすい傾向にある
派遣薬剤師は派遣先と派遣会社で契約を結んだ後に、病院や薬局に派遣されて勤務するため、契約期間が決められています。
契約期間が過ぎると派遣先が変わることがほとんどで、派遣先が変わるごとに薬の配置や業務手順が異なります。そのため、慣れない環境での勤務により正社員に比べて調剤過誤を起こしやすい傾向にあります。
また、派遣先が変わるごとに薬剤師賠償責任保険の保険対象に含まれるかを確認するのは正直面倒です。
このような場合は個人で薬剤師賠償責任保険に加入しておくと便利です。
ここまで派遣薬剤師は薬剤師賠償責任保険に個人加入することを勧めてきました。しかし、派遣会社によっては契約時に薬剤師賠償責任保険が組み込まれている可能性があります。
そのような場合は加入不要です!詳しくは最後の項目で説明していきます。
薬剤師賠償責任保険の費用(年間費)と加入方法について
薬剤師賠償責任保険は薬剤師会等を介して加入する方法と民間の保険会社に加入する方法の2つがあり、どちらも個人での加入が可能です。
費用は年間およそ2000円~1万円。
保険会社によって費用に差がありますが、保障内容はどの保険でも1事故1億円以上となっており、賠償責任が生じても対応できるだけの保障額が設定されています。
契約は1年更新になります。
更新を忘れたりすると期間外となり補償されないので毎年更新が必要となります。
薬剤師会を介して加入する場合(会員になる必要があり、別途会費が必要)
日本病院薬剤師会や日本薬剤師会が提供して薬剤師賠償責任保険です。どちらも加入するには会員である必要があります。
もともと会員の方はこちらの保険を利用すると、民間の保険会社よりも安く薬剤師賠償責任保険に加入できます。
- 年間費:2400円
- 保障内容:1事故最大1億円
- 日本病院薬剤師会の年会費:年間8000円
- 参考URL:日本病院薬剤師会
- 年間費:1950円
- 保障内容:1事故最大1.5億円
- 日本薬剤師会の年会費:およそ1~3万円(非公表)
- 参考URL:日本薬剤師会
民間の保険会社で加入する場合
薬剤師会の会員になっていない薬剤師は、こちらがおすすめ。
薬剤師賠償責任保険の保険料は薬剤師会に比べると割高ですが、年会費が不要のため総合で見ると安く済みます。
薬剤師賠償責任保険を取り扱っている民間保険会社はいろいろありますが、大手だと東京海上日動が有名です。
- 年間費:5000円~
- 保障内容:1事故最大1億円
- 申し込み方法:ネット申し込み不可。東京海上日動の保険商品を取り扱っている代理店で契約可能(不明な点はサポートセンターに確認しましょう)
- 参考URL:東京海上日動
電話で紹介の有無を確認されたので、もしかすると割引等があり、5000円よりも安く加入できるかもしれません。
派遣薬剤師は派遣会社が加入してくれている場合が多い
派遣薬剤師ならば、薬剤師賠償責任保険は必ず加入しておきたい保険ですが、派遣会社によっては薬剤師賠償責任保険が完備されていることがあります。
その場合は個人で加入する必要がなく、費用についても派遣会社が全額負担してくれます。
また、自動的に付加されるので1年ごとの更新手続きが不要であり、契約期間についても制限がなく、短期勤務でも保険に加入した状態で働くことができます。
これから派遣薬剤師として働こうと考えているなら、薬剤師賠償責任保険が完備された派遣会社に登録するのがおすすめです!
ちなみにこちらの3社は完備されています。